小説家のエッセイ
小説を読むより先にエッセイを読んでみることがある。どんな人なのかなぁという興味があったりして、エッセイがある作家の場合は、覗き見気分でつい手を出してしまう。
あんまり先入観なしに小説を読んだ方がいいのかもしれない。ただエッセイと小説は全然テイストが異なるので、そんなに引きずられることもない。
川上弘美『なんとなくな日々』は力の抜けたエッセイ集で、作家の日常の一辺が切り取られていく。鋭い観察眼が披
瀝されるわけでもなく、等身大の暮らしが書かれているのだが、ふとした場面で突然異物が現れてくる。「台所は生と死に深くつながる場所」とかどきっとする表現があったり、突然カッパが登場したり。
ごく短い文章で構成されていて、1200字くらいの長さのツイッターを眺めてるような気楽さで読めた。
あとがきに、小説よりもエッセイを書くのが難しいと書いていて興味深かった。
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ブログ3ヶ月目、100記事になりました。
昨日、ちょうど3ヶ月目、100記事だったのに気づきました。読んでくださっている皆さまありがとうございます。
2ヶ月目のときも書いたけれど、見に寄ってくれたり、最後まで読んでくださったり、☆をつけてくださることがとても励みになっています。
いつのまにか過ぎてたブログ2ヶ月目+ボランティア - kai8787の日記
ブログを書くようになって以来、なんだか毎日の生活にメリハリがついたように思います。散歩に出て、タンポポやつくしを見つけたら、ちょっと得した気分になれたり、雨の日で体調が悪くても珈琲の薫りが癒してくれたり、そんなふとした瞬間がとても大事なことに感じるようになりました。
今日は暖かい一日で、広い公園まで出かけられました。チューリップとムスカリがとっても綺麗に咲いていました。
極小散歩
以前、座れるコンビニが増えてくれると嬉しいと書いた。
今日は何とか外に出られて、お日さまサンサンのなか少し歩けた。といっても近所のコンビニまでで、ありがたいことにそこにイートインコーナーがあったので、スムージーを買って飲みながら休んだ。
こんなにささやかな距離だけど、家から出られないのに比べたら雲泥の差なのだ。部屋とは別の空間に居られるというのは、なんと贅沢なことだろう。
FamilyMartはどうやら、これからつくる店舗にはできるだけイートインスペースを設置する方針らしい。大歓迎だ。ブラボー!
歩くことが大変なとき、歩くって実は色んな関節と筋肉をうまいこと使っている行為なんだと気づく。はぁはぁ言いながらも歩けると少し嬉しい。
元気なときに何でもなくできていることってきっと他にもたくさんあって、今こうして一つひとつに気づいていけるのはいいことんじゃないかと思う。
当たり前だと思って見過ごしていたものたちよ、ありがとう。
名探偵最後の事件
シャーロック・ホームズといえば、知識豊富で観察眼の鋭い名探偵というのが誰もが抱くイメージだろう。しかし、この映画のホームズはちょっとテイストが異なる。
30年前に失敗に終わった、ある事件をきっかけに探偵を引退し、田舎に引きこもり養蜂をしながら余生を暮らすホームズ(イアン・マッケラン)。既にワトソンは亡くなっている。家政婦とその息子・ロジャーとの日々のなかでホームズは最後の事件の記録を残そうと試みるが……。
ホームズにも確実に老いが襲ってくる。ローヤルゼリーや日本の山椒などで対抗しようとするけれど、なかなかうまくいかない。記憶の衰えはそこここに現れてくる。山椒を手にいれるために出向いた日本(出迎えた日本人を真田広之が演じている)の場面では、戦後間もない広島が描かれている。
ホームズは最後の事件の細部を徐々に思い出していく。少しずつ受け入れていく自分の老いがオーバーラップする。
しかし、観察眼は相変わらずの冴えを見せる。賢い男の子・ロジャーもそんなホームズを敬愛している。
静かなイギリスの田舎風景が穏やかで美しい。最後の場面でのホームズの慈愛に満ちた姿が心に残る。
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ねぇ、聞いてよって言われたとき
人から相談を受けたとき、ともかく相手の話をふんふんと聞いて「わかるわかる」と同調するのが女性的で、「それはつまりこういうことか。だったら~して~に行って~したらいい」と具体的にアドバイスするのが男性的な対応という傾向があるらしい。
私はどちらかというと男性的な対応をしてしまうので、あまり女性から相談されることはない。黙って聞いていることが苦手だし、悪口にも声を合わせられなかったりするし。
少しは反省して30分くらいは聞いていられるようにはなってきたけれど、悪口はもう偏屈なぐらいにダメである。
私の悪口嫌いは、子どもの頃に、母から一緒に住んでいた祖父の悪口を聞かされ続けたことに起因する。何故、母が私にだけ悪口を言い続けたのかわからないけれど、私は文句も言わずずっと母の吐く毒を受け止めていた。
ある日、私が友だちに別の子の悪口を言いかけたとき、友だちが「悪口言ったらいけないってお母さんが言ってた」とつぶやいたのを聞いて以来、私は人の悪口を言えなくなってしまった。
悪口を言い続ける母と友人の母の違いに衝撃を受けたのか、自分の行為を激しく悔いたのか、それはよく覚えていないけれど、私はそれから人の良い面に焦点を当てるようになっていった。
それがいいことなのかどうか、わからない。やはりバランスというものがあるだろうと思うからだ。でも、幼い頃の原体験というのは強烈なインパクトがあって、悪口を聞くとムズムズしてしまうのを変えようがない。
私だって悪口を言いたくなることはある。でも、どちらかというと「何故、私はこんなにも彼(彼女)が嫌いなのか」ということに興味がむく。自分の何が拒絶しているのか、考え込んでしまうのだ。この前は、自分自身の嫌いなところと酷似しているからだと気づいた。
どうも、自分が見たくない自分を拡大して見せてくる相手が私は苦手なようだ。そういう居心地の悪いところから離れられれば離れるに越したことはない。
私が悪口を人に言わないでいられたのは、うまく離れることができたからだろう。物理的に、精神的に。
でも、お酒を飲んで上司の悪口を言うくらいは罪がないと思う。そのくらいのつき合いはできるようになりたいかな。
勝手にふるえました
綿矢りさ『勝手にふるえてろ』は何と勢いのあるタイトルなのだろう。初めて読む作家だ。もちろん最年少で芥川賞を受賞したことは知っていたけれど、今まで手に取らなかった。
主人公ヨシカは26歳のOLで恋愛経験なし。中学生の頃から片思いの「イチ」への恋心は日に日に募るばかり。一方、同僚の「ニ」から人生で初めて告白される。
「イチ」があまりに理想化され、久しぶりに同窓会で会っても「あばたもえくぼ」状態が続くのに、「ニ」に対しては冷徹と言えるほどの人間観察をしていて、その対比がおもしろい。
恋というのは、つくづく手前勝手なものだと思う。そして、妄想は雨後の竹の子のようにぐんぐん伸びる。もう自分では制御できないくらいに。逆に周りの人間が凡庸になり色あせていく。
好きのツボが異なるのか、「ニ」への突き放した物言いからだろうか、ほとんど共感できないでいた主人公だったけれど、最後の最後でわっと持っていかれた感じの読後感だった。
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憂うつなときに聴く音楽
どうにもへこたれて元気が出ないときに、私は3人のヴォーカリストの声を求める。
1人目は、鈴木重子。ジャズ・ヴォーカリスト、彼女のハスキーで囁きかけるような声は、ふわふわとした羽で包まれているような安らぎを与えてくれる。
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2人目は、加藤和彦。軽妙なヴォーカルとそのメロディー、洒脱なアレンジ。安心して脱力できる。フォーク・クルセダーズとかサディスティックミカバンドとか伝説のグループの楽曲より、弱っているときは、加藤の個人的な作品の方に惹かれる。
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3人目は、大瀧詠一。やはり、はっぴぃえんどという日本語ロックの草分け的なバンドのサウンドでより、ソロでポップなものが落ち着いて聴ける。
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3人に共通するのは、力の抜けた、ゆったりした歌い方で、私にとって癒し効果が高い。羽を休めている気分になれる。
今日の冷たい雨のなか、出かける用事をキャンセルしてしまったので、少し自責の念が強い。「しょうがないよ、具合い悪いんだもの」そう言って許してもらいながらも、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
これ以上は自分を責めまい。憂うつに拍車をかけることはわかっているのだから。意識して止めないと、自動的にぐるぐる考えてしまうでしょう>自分。それをやると、また長引くよ。
調子が悪いときには考え過ぎないのが大事。と、何度も自分に言い聞かせる。
音楽に浸ろう。シンプルに明日に希望を持とう。