kai8787の日記

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花言葉の物語ーミモザ

散歩の途中で、りっぱなミモザに出会いました。もう大分過ぎてしまいましたが、3月8日はミモザの日、国際女性デーでした。イタリアでは、日頃の感謝をこめて、男性が女性にミモザの花を贈るそうです。

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ミモザ花言葉は、「優雅」「友情」「秘密の恋」です。
例によって、花言葉を使った物語を書いてみます。


「あのさ、頼みがあるんだけど」
ヒロがその長い指を組み合わせながら話しかけてくる。午後3時の学食のテーブルは人がまばらで、声をひそめるほどのこともなく、二人で話ができる。僕はまた夕飯の支度でも頼んでくるのだろうと、ティーカップをソーサーに置いてヒロの方を向いた。
ヒロはいつものように屈託なく話し出すことはせず下を向いている。嫌な予感がした。

「誤解して欲しくないんだけど」そう言って口ごもる。先を促すような言葉が出てこなくて僕も黙っていた。
「俺たち、つき合い初めてもう2年になるかな」
別れ話だ、そう直感した。
「実はさ、本当に唐突で悪いと思うんだけど、しばらく距離を置きたいんだ」

僕たちは誰にも話せない悩みを抱えながら、秘密の恋を大切に育んできた。もうずっとこのまま、2人は離れることがないのだと僕は信じるようになっていた。だけど……。

「それは、もう決めたことなんだね」
「あぁ」

ヒロの真剣な眼差しが僕の胸を刺す。自分が遠くの方から二人を見ているようで、僕は宙ぶらりんに浮遊する。

「嫌いになったわけじゃない。他に好きな人ができたわけでもない。ただ、そういう期間が必要だと思うんだ」
「冷却期間ってことかな」
「うん、そうだけど…ちょっと違う。またつき合うかどうか決めるんじゃなくて、俺たちの間に友情が芽生えるかどうか知りたいんだ」
「友情?」
「恋人としてつき合わないってことと友情は両立できると思う」
「それはつまり、冷却期間じゃなくて終わりってことだよ」
「でも、俺はおまえと友人としてつき合いたいと思っている」
「どうかな。僕には今すぐうまく応えられそうもない。それこそしばらく会わないでいよう」
僕が立ち上がると、ヒロは何か言いたそうにしていたけれど、構わずに歩き出した。ヒロは追ってこなかった。

ありきたりの別れの場面だったねともう一人の僕が言った。

その通り、映画のような優雅さは微塵もない、痴話喧嘩レベルの別れ方だ。現実はこんなもの。

外に出るとミモザの花が咲き誇っていた。去年ヒロが誕生日に贈ってくれた花だった。明日、またひとつ年をとる。


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