kai8787の日記

編み物と散歩と読書とダイエット

まっさらな気持ち

まだ、ほんの小さい頃、そう、グーチョキパーのチョキがうまくできないくらいの幼い頃、私はくまのプーさんの絵本と白いくまのぬいぐるみ「マコちゃん」が大好きだった。

絵本は兄に油性のサインペンで全てのページにいたずら書きされ、マコちゃんは「汚くなったから」と母に捨てられ、共に号泣することになった。今、思い出してもすごーく悲しい。

そんなことを思い出したのは高橋源一郎の『さよなら クリストファー・ロビン』を読んだからだった。大人のためのファンタジー小説集である。

表題作「さよなら クリストファー・ロビン」は子どもの頃読んだ童話の数々が登場する。最後にくまのプーさんで締めくくられるのだけれど、とても切ない終わりだった。

「峠の我が家」は、私にとっての「マコちゃん」のように、誰でもいただろうごく小さい頃の「友だち」についての話。

「星降る夜に」ーー大学を卒業してから全く働かず、誰にも読まれない小説を書き続けて四十歳になった「わたし」は養ってくれていた女性から「働いて」と言われ、職探しに行く。そこで得たのは、事情のある子どもたちに本を読むという仕事だった。


あどけないが実は哲学的問いかけをする子と、それに丁寧に応える優しくて落ち着きのある父との会話が楽しい「峠の我が家」。最後に鉄腕アトムをモチーフにした哀愁を帯びた物語がある。

死んだ人がやって来て、クラスメートや議員になる奇妙な世界と死んだ人が去っていった後に残されたものを描く「ダウンタウンへ繰り出そう」

アトムとトビオの物語を縦軸に、時間があべこべの世界や突然別の誰かに移行する世界を横軸にした、存在するとは何かを問う「アトム」

それぞれの物語がクラっとするような異次元の世界に誘う。一冊で何度も楽しめ、様々な思いが錯綜する状態にしてくれる本だった。



さよならクリストファー・ロビン

さよならクリストファー・ロビン



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