本で旅する
まだ働けていた頃にバリ島に行ったことがある。それが最後の海外旅行となった。少し街に出かけて買い物もしたし、ガムランなども見物させてもらったが、結局ホテルのプール際で寝転んだり白い浜辺を散歩したりしてのんびりできたのが一番良かった。
じゃ、わざわざ南半球まで出かけなくてもいいじゃんと言われれば、誠にその通りで、ホテルや旅館の外にちょっとした散策路があって部屋の他に寝そべることができる開放的なスペースがあれば私は大満足なのである。
バリの思い出の一つに郵便がある。実は試しに自分に宛てて絵葉書を出したのだけれど、日本に帰ってからとうとう届かなかったこと。もう一つは、ホテルのバーテンダーと仲良くなって、「カクテルの勉強をしたいんだ。日本語のでもいいから、本を送ってくれないか」と頼まれたので、帰国してから郵送したのだけれど、あれは無事に届いたのだろうか。
村上春樹の紀行文集『ラオスにいったい何があるというんですか?』は、ボストン、アイスランド、ポートランド、ギリシャの島々、ニューヨーク、フィンランド、ラオス、イタリアのトスカナ、熊本への旅の記録が綴られている。
この先の人生で行くことはあるかな、たぶんないだろうななどと思いながら、彼の地にそれぞれ思いを馳せた。
ボストンで交響楽を聴いて、アイスランドで温泉に入って、ポートランドで舌鼓を打ち、ミコノス島までクルージングして、ニューヨークのジャズクラブでグラスを傾け、フィンランドでムーミンに出会い、メコン川をぼーっと眺め、トスカナのワインセラーで酔っぱらい、熊本でくまモンに押し寄せられる。そんなことを想像しながら楽しく読んだ。
ニューヨークのところで、もしもタイムマシーンがあったら、何処へ行きたいかという話があって考えたのだけれど、私は過去よりも未来に行きたいと思った。世界がどんな風に変わっているか見てみたい。平和で自然が豊かで、人々が穏やかであればいいのだけれど。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2015/11/21
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