kai8787の日記

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表現の自由とは?中立とは?無関心とは?

最近見逃してしまって残念に思っている映画に「否定と肯定」がある。が、私は映画館が苦手なので、映画に携わっている方々には誠に申し訳ないが、作品を映画館ではほとんど見られない。

という訳で、原作デボラ・・リップシュタット『否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い』を手に取った。

ホロコースト否定論者のアーヴィングが名誉を毀損されたとして、イギリスでリップシュタットと版元のペンギンブックスを訴える。これはドキュメンタリー。イギリスでは、名誉を毀損したとされる側に立証責任がある。リップシュタットは多くの法律家や歴史家、ユダヤ社会の人々の力を借りて、アーヴィングの間違いを一つずつただしていく。

弁護士は裁判の間沈黙を守るようリップシュタットに指示する。敏腕弁護士の法廷での立ち居ふるまい(アーヴィングの逃げ口上をどこまで追求するか)、裁判官の冷静さ、そして一番胸を打つのは、裁判を見守るホロコーストの生存者の眼差しだ。ときに感情を揺さぶられるリップシュタットも、その眼差しによって落着きを取り戻し、勇気を得る。

アーヴィングはそんな生存者たちに向かい「その入墨でいままでいくら稼いだんです?」などと暴言を吐く。どこかで似たようなセリフを聞いたように思う。

負の歴史をごまかさずに向き合うことの大切さ、二度と悲劇が起こらないように引き継ぐことの大変さを考えずにはいられなかった。

否定と肯定 ホロコーストの真実をめぐる闘い (ハーパーBOOKS)

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