ゆるくつながる
pha『持たない幸福論』読了。
毎日ぎゅうぎゅうの通勤電車で通い、9時から5時まで働いてまた満員電車で家にたどり着くことが、以前は私の「普通」だった。けれど、今となっては彼ら彼女らはスーパーな存在だ。私にはやろうとしても無理だとわかっているから。
そう諦めることができたのは、働けなくなってから随分と年月を経てからのことだった。その間ずっと私は「普通」から「落ちこぼれ」たくないと必死になって自分を鼓舞したり責めたてたりしていた。
phaさんは言い切る。
多くの人が普通にこなせないものを「普通の理想像」としてしまっているから、みんなその理想と現実のギャップで苦しむのだ。そんな現状と合っていない価値観からは逃げ出していいと思う。
こうであらねばならないという決めつけは、それが自分の身の丈に合わないものであれば、真綿で自分の首を絞めることになる。phaさんは病気にまでならなかったが、不調のためサラリーマン生活に耐えられなくなり辞職、その後できるだけ働かない代わりに、お金を使わない生き方を選ぶ。
住居費を節約するためにシェアハウスを運営してるのもその一環だが、シェアハウスはそれだけの目的ではない。「普通」から外れた人間に必要なのは、人とのつながりと居場所だという。
貧困というのは、単に経済的な問題ではなく、助け助けられる人との関係や困ったときに頼れる先などが限りなく少なくなることだというのは、他の本でも読んだことがあった。
シェアって大事だなって思う。自分だけで独占するのでなく皆で利用すれば、所有しなくてよい。それは住まいだけでなくて、いわゆる家族も固定しなくていいんじゃないかとphaさんは言う。ガチガチでなくてふわぁーっと繋がるゆるい関係を複数築くと、「この人が居なくなったら生きていけない」というギリギリ感がなくなっていいかもしれない。
pha さんは基本的に自分を受容していると思う。自分に過度な期待もしないし、物や人に対する独占欲も少ないように思う。それはとても心地よいことなんだろうなと感じて、読んだ後、気持ちが軽く自由になった気がした。
持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない
- 作者: pha
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2015/05/26
- メディア: 単行本
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