ペンギンの憂鬱
「現在、ロシア語でものを書く最も優れた作家の一人」と称されるアンドレイ・クルコフの代表作『ペンギンの憂鬱』を読んだ。
憂鬱症のペンギンと暮らす売れない短編小説家ヴィクトルの引き受けた仕事は、まだ亡くなっていない人たちの追悼記事を書く仕事だった。舞台はウクライナのキエフ。大物たちが次々と亡くなっていき、ヴィクトルにも不穏な影が近づいてくる。心臓の悪いペンギンの運命は……。
題名に惹かれて手に取った。不思議な小説だ。主人公のヴィクトルはとてもドライな性格で、ペンギンはときどき不眠症だったりする。2人の穏やかな生活の中にじわじわと騒がしさがやってくる。
ソ連崩壊後のウクライナの首都キエフは、ときどき銃声が響いたり、マフィアが暗躍しているところだ。
ただ部屋で原稿を書いているだけのヴィクトルもその原稿が元で、厄介ごとに巻き込まれていく。徐々に忍び寄る恐怖の影に時に怯えながら、それでもどこ吹く風と飄々と原稿を書き続けるヴィクトルだったが、最後に立て続けにあっと驚くような行動力を発揮する。
群れから離されたペンギンはソ連から離れたウクライナを象徴しているのか?私は政治的な物事が苦手なので、正直そのあたりのことはよくわからない。
ペンギンと一緒に散歩したり、湖に行ったりするのがほほえましかった。でも、ペンギンは楽しかったのかな。たまたまテレビに写ったペンギン仲間が消えたあと、テレビを押してしまうペンギンの姿が哀しかった。
- 作者: アンドレイ・クルコフ,沼野恭子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2004/09/29
- メディア: ペーパーバック
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