ねぇ、聞いてよって言われたとき
人から相談を受けたとき、ともかく相手の話をふんふんと聞いて「わかるわかる」と同調するのが女性的で、「それはつまりこういうことか。だったら~して~に行って~したらいい」と具体的にアドバイスするのが男性的な対応という傾向があるらしい。
私はどちらかというと男性的な対応をしてしまうので、あまり女性から相談されることはない。黙って聞いていることが苦手だし、悪口にも声を合わせられなかったりするし。
少しは反省して30分くらいは聞いていられるようにはなってきたけれど、悪口はもう偏屈なぐらいにダメである。
私の悪口嫌いは、子どもの頃に、母から一緒に住んでいた祖父の悪口を聞かされ続けたことに起因する。何故、母が私にだけ悪口を言い続けたのかわからないけれど、私は文句も言わずずっと母の吐く毒を受け止めていた。
ある日、私が友だちに別の子の悪口を言いかけたとき、友だちが「悪口言ったらいけないってお母さんが言ってた」とつぶやいたのを聞いて以来、私は人の悪口を言えなくなってしまった。
悪口を言い続ける母と友人の母の違いに衝撃を受けたのか、自分の行為を激しく悔いたのか、それはよく覚えていないけれど、私はそれから人の良い面に焦点を当てるようになっていった。
それがいいことなのかどうか、わからない。やはりバランスというものがあるだろうと思うからだ。でも、幼い頃の原体験というのは強烈なインパクトがあって、悪口を聞くとムズムズしてしまうのを変えようがない。
私だって悪口を言いたくなることはある。でも、どちらかというと「何故、私はこんなにも彼(彼女)が嫌いなのか」ということに興味がむく。自分の何が拒絶しているのか、考え込んでしまうのだ。この前は、自分自身の嫌いなところと酷似しているからだと気づいた。
どうも、自分が見たくない自分を拡大して見せてくる相手が私は苦手なようだ。そういう居心地の悪いところから離れられれば離れるに越したことはない。
私が悪口を人に言わないでいられたのは、うまく離れることができたからだろう。物理的に、精神的に。
でも、お酒を飲んで上司の悪口を言うくらいは罪がないと思う。そのくらいのつき合いはできるようになりたいかな。