あくまで私の好みですが
私は割とタフな女性が好きだ。イメージとしては天海祐希さんくらい(あくまで役柄のイメージですが)。米倉涼子さんだとちょっと人間離れしていて近寄りがたい。微妙な違いなのだけれど、強さの中にも少々のフェミニンな柔らかさが欲しい。
パトリシア・コーンウェルの「検視官」シリーズはずっと米倉涼子的タフさを持つ敏腕検視官ケイ・スカーペッタが主人公だった。
でも今回の『黒蝿』では、スカーペッタにまるで元気がない。前作で襲いかかってきた不幸の数々をひきずっていて、検視官局長も辞任し、マイアミのデルレイビーチで法病理学のコンサルタントをやっている。
一方でルイジアナの州都バトンルージュで、女性の連続誘拐殺人事件が起こる。
そんな中、スカーペッタのところに、彼女を殺そうとした死刑囚“狼男”から「会いに来て欲しい」という手紙が届く。
- 作者: パトリシアコーンウェル,相原真理子
- 出版社/メーカー: 講談社
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今回、私は大失敗していて、シリーズものなのに前作を飛ばして本作を読んでしまった。読み始めてそのことに気づいたのだけど、「まぁ、いいや」と思ってそのまま読んだ。前作で何があったのかは粗方説明されているので、スカーペッタの気弱さや逡巡が理解できる。
いつもと違うテイストで、登場人物一人ひとりを掘り下げていく構成でそれぞれが犯人に迫っていく。
気落ちしているスカーペッタも事件解決に向けて徐々に元気を取り戻す。
ただ、犯人が快楽のためにだけに犯行を重ねるという設定は、私の好みではない。その背景が描かれてないと重層感に欠けるように思う。
アメリカの推理小説やドラマには、怪物のような犯人が出てきて、「私たちと根本的に違う生きもの」として描かれることが多いのだけど、フィクションとわかっていても何だかそれにはついていけない自分がいる。
犯罪者となってしまう人を怪物化すれば、私は単純に「良い人」の一人でいられるけれど、現実の犯行に至るにはもっと複雑で様々な事情や成行がある。そういうところを捉えて追求するような作品が読みたいときもある。
勧善懲悪もし過ぎると、リアリティーが失われて、ミステリーというよりホラーに近くなるということだ。
申し訳ないけれど、私はホラーとジェットコースターが苦手なのです。