「孤独の発明」とは何か
2日前に少しだけ孤独について考えた。
いったい孤独というのはどうして生まれてくるのか。孤独が生み出すものとは何なのか。
ポール・オースター『孤独の発明』は2つの物語からなる。どちらも孤独をテーマとしている。
1つ目は「見えない人間の肖像」。オースターの父に関する物語だ(オースターのモノローグなのだが、著者は自伝ではないとしている)。家族とうまくコミュニケーションできずに亡くなった父の孤独を何とか理解しようとしているうちに、オースターはある事件に行き当たる。それは父にとって過酷なものだった。
2つ目は、作業場みたいな部屋で「記憶の書」という本を書き続ける男の話。Aは「機械と、痰壺と、汗のための場」に住みながら記憶の書という本を書いている。本を書くという孤独な作業。孤独の発明品としての本。
記憶の書には様々な事物ー旅の記録、会った人々、息子のこと、読んだ本の一節、美術館の絵、子どもの頃の思い出が書き出されていく。
読んでいると、一人の作家の「書く」という行為を見まもっているような錯覚を覚える。そう、一種の文学論の聞いているかのような。
書くことは記憶すること、と同時に記憶を手繰ること、それができるのは孤独の最中にいるとき。そして作家は一人で部屋のなかを歩きまわり、記憶の断片に想像を羽ばたかせ物語を紡いでいく。
彼は目を覚ます。彼はテーブルと窓のあいだを行ったり来たりする。彼は腰をおろす。彼は立ち上がる。彼はベッドと椅子のあいだを行ったり来たりする。彼は横になる。彼は天井を見つめる。彼は目を閉じる。彼は目を開ける。彼はテーブルと窓のあいだを行ったり来たりする。
彼は新しい紙を取り出す。それをテーブルの上に広げて、これらの言葉をペンで書く。
それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。
この本はまだ世に出ていない頃のオースターの魂の吐露である。だからなのか、苦悩や孤独の香りが舞っている。
- 作者: ポールオースター,Paul Auster,柴田元幸
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