憧れの先輩
あなたには身近な人の中に尊敬したり目標にしたりできる人がいますか?
又吉直樹『火花』は、売れない漫才師・徳永が同じく売れないけれど笑いに対してクレージーといえるほど真正面から真摯に取り組んでいる先輩漫才師・神谷との交友のなかで、喜怒哀楽を味わう物語。
主人公は著者の又吉直樹を彷彿とさせるシャイでトーンの低い漫才師。花火会場での漫才の仕事のとき、ひと際異彩を放つ神永と出会った。その日のうちに弟子入りする。
二人で飲んで話すときの会話はボクサーで言えば軽いジャブを交わすようなボケと突っ込み。そして、神永の笑いへの真っ直ぐな思いが語られる。
徳永はおもろいと思っている神谷が世間から評価されないことに、やるせない思いを抱える。
しかし、神谷は笑いにのめり込むことで、世間からどんどん遊離していく。
二人の芸人の行き着く先は……。

- 作者: 又吉直樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2017/02/10
- メディア: 文庫
- この商品を含むブログ (12件) を見る
私にも憧れの先輩がいる。到底その人には及ばないとわかっているけれど、つい追いかけてしまう存在だ。その落差に苦しんでいたときもある。ダメな自分にとことん落ち込んでいた。ただ最近になって、私は私なのだという、ある種の開き直りができるようになってきた。
とても素敵なその人の立ち居ふるまいをそのまま真似ようとしても、どだい無理なのだから、私は私のスタイルを模索するしかない。背伸びしないでありのままの私でいくしかないのだ。
そう考えるようになってから、少しだけ肩の荷が降りたように思う。