kai8787の日記

編み物と散歩と読書とダイエット

シェアハウスってどんな感じ?

最近、シェアハウスに興味があって、検索して物件を見たりしている。東京でも3万円台で住めるものから、カフェみたいな共用スペースのあるソーシャルアパートメントまで色々ある。

自分がシェアハウスで暮らせるかなと想像してみると、ちょっと楽しそうでちょっとしんどそうな気がする。元気のあるときは交流を楽しめるだろうけど、そうじゃないときはあんまり人に会いたくないからなぁ。

そういうときは自室にこもっていればいいのか。でもなー、トイレとかお風呂とか共用だから、そうもいかないし。おっと、今あんまり調子良くないから、マイナス面ばかり考えちゃうな。いけない、いけない。

そんなわけで、シェアハウスに関する軽めの話を読みたいなと思い、小路幸也荻窪シェアハウス小助川』を手に取った。ほっこりする、ハートウォーミングな小説だ。

シェアハウス小助川に集う住人は基本的に善人。住人の一人、家事が得意な19歳の青年の日記のような軽やかな文体で、シェアハウスの日々が綴られていく。

もちろん事件は起きる。それをきっかけにして新たな生き方を選択する者も出てくる。でも、手軽で気楽にすっと読める物語だ。そうそう、家事ができる男ってかっこいいと思う。

荻窪 シェアハウス小助川 (新潮文庫)

荻窪 シェアハウス小助川 (新潮文庫)

荻窪シェアハウス小助川

荻窪シェアハウス小助川

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ダメさを許す人間はダメか

ダメさを責める人がいる。説教したりとか怒ったりとか。私の苦手なタイプだ。そういう一方通行なのより、私はダメさ加減を笑い合える人間関係が好きだ。ダメと共に生きていくのも、ダメの辛さをわかっているのも本人だからだ。

たまには、ダメをこじらせるときがある。必要以上に自分を責めてしまったり、自分を無価値な人間だと蔑んだりしてしまうこともある。

でも、克服しようのないダメさがあることを私は知っている。私は、私のダメさを抱えて、あっちこっちにぶつかりながら生きている。そして、しょうがないなと笑う。

私のダメさは、例えば悲観的将来没落妄想にとらわれているところ。ちょっとした悪いことがあっても、すぐにこのままじゃ、あーすることもこーすることもできないし、何もかもダメになってしまう。うわーん状態になる。

 ̄(=∵=) ̄《そのことは今一回しか起こってないのに、この先ずっと続くって思っちゃうんだね。》

そうなんだ。良くないことって、その都度違う場面や異なる状況で起きてることなのに、思い詰めちゃう。

 ̄(=∵=) ̄《悪いコトの内容も限定して受け止めないとね。今日は大好きなオオバコはなかったけど、タンポポはあったとかさ、悪いコトばかりじゃないし、今度はオオバコのありかを友だちに聞いておいてもいいし、そもそもオオバコが生えてないのは私のせいじゃなーい!》

そうか。自分で対処できることはすればいいんだよね。それ以外は自分の力では防ぎようがないことだから、自分を責め立てちゃいけない。

でもでも、頭ではわかっても、またわあーんてなっちゃうかもー。

 ̄(=∵=) ̄《ダメだ、こりゃ》



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感情の穴に落ちたときには

私はどちらかというと悲観的な人間だ。ただ、割りと単純な性格なので日々のちょっとした幸せを感じて、将来の不安をまぎらわして生きている。

楽観的とか悲観的な性格というのは、やはり生来のものなのだろうか。若くてエネルギーに満ちていても悲観的な人はいるし。

楽観的な人には根拠のない自信がある。今日とか明日とか、せいぜい一週間くらいのことを思って生きている人が多いと思う。

反対に悲観的な人間というのは、先のことまで考え過ぎてしまう。一見何かしら根拠があるように思うけれど、一寸先がわからないのが世の常なので、こちらもあまり根拠がないといえばないのだ。

あんまり先のこと考えても仕方がないと分かっていても、気がつくと落ち込んでいることがよくある。こういうのは理屈じゃなくて、もう脳の癖みたいなもので仕方がないのかなぁ。

今日読み終わった村上春樹の『東京奇譚集』にこんなセリフがある。

「嫉妬の気持ちというのは、現実的な、客観的な条件みたいなものとはあまり関係ないんじゃないかという気がするんです。つまり恵まれているから誰かに嫉妬しないとか、恵まれていないから嫉妬するとか、そういうことでもないんです。それは肉体における腫瘍みたいに、私たちの知らないところで勝手に生まれて、理屈なんか抜きで、おかまいなくどんどん広がっていきます。わかっていても押し止めようがないんです。幸福な人に腫瘍が生まれないとか、不幸な人に腫瘍が生まれやすいとか、そういうことってありませんよね。それと同じです」

負の感情が広がっていくと命を落とすこともある(このセリフを言った女子大生は自殺してしまう)。人はそこまで追いつめられるのだ。他人にその辛さが本当にわかることはない。

ときどき、そういう深い穴に落ちて、わぁーっとなってしまうことがある。感情の大波が押し寄せてきて、理性を凌駕してしまうのだ。そんなとき、この腫瘍の話を思い出してみよう。私の意志と関係なく、私を蝕んでいく様子を。そうすれば逆に、実体のない感情を手のひらに乗せて眺めることができるかもしれない。

東京奇譚集 (新潮文庫)

東京奇譚集 (新潮文庫)

この本は、5つの短編からなる短編集である。「偶然の旅人」、 「ハナレイ・ベイ」、「どこであれそれが見つかりそうな場所で」、「日々移動する腎臓のかたちをした石」、「品川猿」。

どの話も喪失をめぐる物語だ。個人的には先にセリフを引用した「品川猿」が、村上春樹らしい異世界があって良かった。

東京奇譚集

東京奇譚集


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幸せの贈り物

かきつばたの花巾着ができました。色を変えながら編んでいきました。開け口と持ち手が花模様になっていて、ちょっと苦労しましたが、気に入っています。


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かきつばたの花言葉は、≪幸運は必ず来る≫、≪幸せはあなたのもの≫、≪贈り物≫です。

さて、花言葉を使った物語を書きました。良かったら、読んでください。


僕が19歳のときに亡くなった父が口癖のように言っていた言葉がある。
「いいか。どんなに辛いことが何度も押し寄せてきて、つぶれそうになっても、『幸運は必ず来る』って思えよ。そうすれば、どんな苦難も必ず乗り越えられるからな」

父の人生は決して楽ではなかった。祖父は幼いときに他界していて、祖母が小さな金物屋を営みながら細々と暮らしていた。けれども時代の波で商店街が廃れていくのとともに廃業に追い込まれてしまった。祖母はもともと身体が弱かったので、父は中学を卒業してすぐに働き始めた。
本当は新聞配達をしながら定時制高校に通いたかったが、3つ違いの弟を進学させてやりたかったので、昼と夜に肉体労働をかけもちでやった。弟は高校を卒業すると「大学へは自分の力で行くよ」と笑った。

その叔父は父の葬式のとき、棺に手をかけ、肩を落として泣いていた。しばらくして僕の傍らに来て、「困ったことがあったら、ぐずぐずせんと俺のところに来いよ」と励ましてくれた。今では、小さい印刷会社の社長をしている。

叔父の高校の卒業式が終わってまもなく、父は工事現場で事故にあい、左足の膝から下の切断を余儀なくされた。父は義足をつけて懸命にリハビリをした。そのとき知り合ったのが作業療法士をしていた母だった。二人は、父がだんだんと歩けるようになるごとに、少しずつ愛を育んでいった。

父のプロポーズの言葉は、
「君を幸せにできるかはわからない。だけど、君と一緒にいれば僕はどんな苦労があったって幸せになれる」
だった。
母は微笑んで
「幸せはあなたのものなの?あなたが幸せなら私だって幸せになれるわ」
と応えた。

煙になって天に上っていく父を見上げながら、母がつぶやいた。
「お父さんがくれた最高の贈り物はおまえだよ」



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さぁ、もう一度。 Re-born

自分ではどうしようもないことがある。どんなに思ってももはや叶わない。もう努力とかそういうのでなく、誰かに振り向いて欲しいのにそれは無理なのだとわかってしまったりとか。

挫折とまでいかなくても、これまでとは違う新たな道へ一歩踏み出さないといけないときもある。まっさらな気持ちで、せいのって感じで。

友だちが背中を押してくれるか、自分で踏み切るか、何かしら大きな流れみたいのにさらわれて結果飛び出すことになるのか、その時々で違うけれど、どこかでふんぎりをつけないと辛いばかりだ。

泣いたり悩んだりもんもんとしたり食事が喉を通らなかったりするけど、失ったものはもう戻ってこない。だから、思いを立ち切る。最後はやっぱり自分で決めることになる。

この本は7人の作家の短編集。『羊と鋼の森』の宮下奈都の名前があったので手に取ってみた。まだ、デビュー間もない頃の作品だ。受験に失敗し、行く気のなかった高校に通う女子高生があることに気づくまでの物語が、淡々と綴られている。

他の作品も「再生」や「発見」「気づき」をテーマにしている。ほろにがかったり、秘めたる思いにぐっときたり、何だかティーンエイジャーの頃の懐かしい思いに駆られた短編集だった。

Re-born はじまりの一歩

Re-born はじまりの一歩

宮下奈都『よろこびの歌』
福田栄一『あの日の二十メートル』
瀬尾まいこゴーストライター
中島京子『コワーリョフの鼻』
平山瑞穂『会ったことがない女』
豊島ミホ『瞬間、金色』
伊坂幸太郎『残り全部バケーション』


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私に道を聞かないで

今日はそんなに寒くなく、よく晴れて気持ちが良かった。あんまり人と出会わないコースを散歩していくと、横断歩道で40代くらいの男性が「今日は雨降らないよね」と声をかけてきたので、「はい」と応えた。そのまま男性は通り過ぎて行ってしまったけれど、いったい何だったのだろうと首を傾げる。「空はこんなに青いのに」

帰り道でも同じ横断歩道で50代くらいの男性に駅に行く道を尋ねられた。まぁ、これは普通。私はよく人に道を尋ねられる。一度など、人が大勢いる駅の近くで、頑張って急いで歩いていたにもかかわらず、すれ違いざまに呼び止められて聞かれたこともある。

友だちに言わせると「優しそうに見えて、ちゃんと道を教えてくれそうってことだね」という。

でも、申し訳ないけど、私は道を一本か二本間違って教えてしまうことが多々あって、後の祭りだったりする。ごめんなさい。

おまけに、駅前で友だちとの待ち合わせで座っていたら、隣のおじさんから「この辺りで別荘といったら、どこですか」と話しかけられ、最終的には天然石のブレスレットを売りつけられそうになったこともある。

だから、しっかりしてるように見えるわけではなく、ぼーっとして見えるのだろう。

それに私は決して優しくない。

夏の暑い日、コンビニでアイスを買って鞄に入れ、早く帰って家で食べようと思っていたときに、30代くらいの男性に道を聞かれた。行きたい先が市役所だと言うので、市役所は数年前に駅の向う側に移転して、駅からバスに乗らないと行けませんよと説明して、駅の行き方を教えた。

しばらくすると、また、その人と遭遇して、道を聞かれた。教えた通りの道を行ってないのは明らかだった。その人はちょっと待ってくれといい、パソコンを鞄から取り出して起動し始めたが、なかなかたちあがらず、私はアイスが溶けてしまうことを覚悟した。やっとパソコンで地図を出し、このビルへ行きたいのだと指さしたところは、元の市役所の近くのビルだった。優しくない私はむっとしてぶっきらぼーに道を教えたのだった。

家に帰って、冷凍庫に溶けかけのアイスを入れてから反省した。あの人は古い地図を見ていて「市役所のそばのビル」と思い込んでいたのだろうな。それで、私が新しい市役所の場所を説明してもピンと来なかったのだろう。もう少し、ゆっくり話を聞いて丁寧に教えてあげれば良かったな、悪かったなぁ。私は食い意地がはっているからなぁ。アイスくらいのことであんなに焦らなくても良かったのに。

で、そのとき気づいた。道を一本間違って教えていたことに。うぅ…本当にごめんなさい。


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暗闇を語ることー希望

小学生の頃の親友は、自然と人が集まってくる不思議な魅力のある子だった。彼女が何故私と仲良くなったのかはわからない。友人でありながら、私は彼女に憧れのようなものを抱いていた。私は不器用で人を寄せ付けないようなところがあって、柔らかく人を包み込むような人柄の彼女とは対照的だった。

私たちはクラスは違いこそすれ、中学・高校も同じだったけれど、毎日一緒に登下校するような親密さはなくなっていった。そして、私は相変わらずクラスの中で居場所を見つけられずにいた。

ポール・オースター鍵のかかった部屋』を読み始めてすぐ私は懐かしくその頃のことを思い出した。この小説の主人公「僕」も幼友達ファンショーに畏敬の念と憧れ、その裏返しである嫉妬の感情を抱いていた。

成長するにつれ、次第にファンショーと疎遠になった「僕」のところに彼の妻からの手紙が届く。批評家として活躍していた「僕」は、失踪したファンショーの残していった小説や詩、戯曲の原稿を託されることになる。

ポール・オースターの語り口にはいつも直ぐに引き込まれてしまう。例えば、こんな一節。

暗闇だけが、世界に向かって自分の心を打ち明けたいという気持ちを人に抱かせる力を持つ。…(略)…暗闇について書くには勇気が要る。だがそれについて書くことこそ暗闇から逃れうる唯一の可能性であることを僕は知っている。

暗闇のどこかに出口を見つけ出すという希望を勇気だとして、「僕」は語り出す。その希望に根拠などない。たとえ、真実を語ったとしても出口が見つかるとは限らない。それでも人は勇気を出して、暗闇にのみ込まれないよう、出口を求めて歩んでいく。

小説を読むというのは、暗闇を覗くことなのかもしれない。そして、その暗闇は深いところで自分の暗闇と結びついているから、共感や感動が生まれる。暗闇を持たない人間などいない。ただ、それを語れるかどうかの違いはある。

別に自分の闇をあけすけに語らなくても全く問題ない。小説家も小説という型があるから、魂の深部が引き出せるのだろう。ただ、語らなくては本当に救われないこともあるのだ。闇が文字通り明るみに出ることで解き明かされる哀しみがある。カタルシスはそういうときに訪れるのだろう。

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

鍵のかかった部屋 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

鍵のかかった部屋

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