kai8787の日記

編み物と散歩と読書とうさぎさん ̄(=∵=) ̄

本の記録・感想

少年の夢と現実とはるかな記憶の残滓

ブログ拝読中の高岡ヨシさんの『五厘クラブ』を読んだ。主人公で語り手の「オレ(タカクラ)」の試練と成長を縦糸に、一緒に遊んでいた少年時代の友だち達との交流を横糸に、織り成される物語。少年の頃の友情における心の襞が懐かしさを伴って胸に込み上げ…

久しぶりに本を読み終わりました。

江國香織『間宮兄弟』読了。35歳の明信と32歳の徹信は兄弟でマンション暮しをしている。当然両方とも独身。数々の女性にふられて今は2人それぞれマイペースで生活を楽しんでいる。「歯磨きもシャンプーも怠らず、心根のやさしい間宮兄弟ではあったが、現に…

本で旅する

まだ働けていた頃にバリ島に行ったことがある。それが最後の海外旅行となった。少し街に出かけて買い物もしたし、ガムランなども見物させてもらったが、結局ホテルのプール際で寝転んだり白い浜辺を散歩したりしてのんびりできたのが一番良かった。じゃ、わ…

雪国の探偵

私は静岡県で育ち今は東京暮らしなので、雪国の生活は経験したことがない。ものすごく大変なんだろうな。雪降ろしとか雪の中の移動とか。しかもペーパードライバーで、どこから人が飛び出してくるかわからない恐怖症なので、車の運転は難しい。よって、電車…

軽い読み物が欲しいときもある

家族にも色々ある。関係がこじれているレベルも虐待からささいなケンカまであって、「家族は助け合わなきゃ」というのは正しいようで微妙な言い方だと思う。有川浩『フリーター、家を買う』は就活や家族関係の修復、助け合いをテーマとした物語。主人公の誠…

憧れの先輩

あなたには身近な人の中に尊敬したり目標にしたりできる人がいますか?又吉直樹『火花』は、売れない漫才師・徳永が同じく売れないけれど笑いに対してクレージーといえるほど真正面から真摯に取り組んでいる先輩漫才師・神谷との交友のなかで、喜怒哀楽を味…

あくまで私の好みですが

私は割とタフな女性が好きだ。イメージとしては天海祐希さんくらい(あくまで役柄のイメージですが)。米倉涼子さんだとちょっと人間離れしていて近寄りがたい。微妙な違いなのだけれど、強さの中にも少々のフェミニンな柔らかさが欲しい。パトリシア・コー…

M・クビカ『グッド・ガール』

恋人にすっぽかされたバーで話しかけきた男は彼女の誘拐を依頼されていた。ピストルで脅され森の中のキャビンに閉じ込められたミア。物語は誘拐前と後をミアの母イヴと刑事のゲイプ、誘拐犯のクリフのモノローグで綴られていく。最後に明かされる真相は驚く…

小説家のエッセイ

小説を読むより先にエッセイを読んでみることがある。どんな人なのかなぁという興味があったりして、エッセイがある作家の場合は、覗き見気分でつい手を出してしまう。あんまり先入観なしに小説を読んだ方がいいのかもしれない。ただエッセイと小説は全然テ…

勝手にふるえました

綿矢りさ『勝手にふるえてろ』は何と勢いのあるタイトルなのだろう。初めて読む作家だ。もちろん最年少で芥川賞を受賞したことは知っていたけれど、今まで手に取らなかった。主人公ヨシカは26歳のOLで恋愛経験なし。中学生の頃から片思いの「イチ」への恋心…

ペンギンの憂鬱

「現在、ロシア語でものを書く最も優れた作家の一人」と称されるアンドレイ・クルコフの代表作『ペンギンの憂鬱』を読んだ。憂鬱症のペンギンと暮らす売れない短編小説家ヴィクトルの引き受けた仕事は、まだ亡くなっていない人たちの追悼記事を書く仕事だっ…

深い森のなかの事件

久しぶりにミステリーを読んだ。マリーア・シェンケル『凍える森』。 1922年、南バイエルンの片田舎ヒンターカイフェックの大きな農家で一晩のうちに6人が惨殺された『ヒンターカイフェック殺人事件』は、ドイツ犯罪史上もっともミステリアスで猟奇的な事件…

まっさらな気持ち

まだ、ほんの小さい頃、そう、グーチョキパーのチョキがうまくできないくらいの幼い頃、私はくまのプーさんの絵本と白いくまのぬいぐるみ「マコちゃん」が大好きだった。絵本は兄に油性のサインペンで全てのページにいたずら書きされ、マコちゃんは「汚くな…

女子会の覗き見気分で

小説ばかり読んでいたので、たまにはエッセイを読みたくて、選んだのが山本文緒『日々是作文』。著者が31歳から41歳になるまでの約10年間に雑誌などに書いたエッセイを集めた本だ。さばさばしていて、あっけらかんと自分をさらけ出している、という印象を持…

孤独にも型があるのだろうか。

感情ってどこから生まれてくるんだろう。例えば、母性愛なんかは子どもができたらごく自然におこるって思っていたんだけど、この本のなかで話し手たちはそれと違う意見を持っている。内田樹×名越康文×西靖『辺境ラジオ』は、ラジオ放送を書き起こした本なの…

しばらく引きずるときもある

男性だからとか女性だからと一般化するのは良くないと思っている。ただ、私が読んできた中では、女性の作家が書いたものの方がずしりと重いものを私に残し、しばらくその重石が取れなくなることが多い。男性で言えば松本清張などが似たような重石を投げてく…

物語のリアリティー

本を選ぶときはタイトルに惹かれたりする場合もある。読んだことのない作家だと特にタイトルで手に取ることが多い。 中村文則『去年の冬、きみと別れ』もそんな小説の一つだった。中村文則は推理小説家だ。けれど、タイトルはそれっぽくなく感じて興味を持っ…

ふと気づいてしまった。

作家は、登場人物の名前をどのように決めているのだろうか。そう思ったのは、名前に色のついた人物を多く登場させている本に出会ったからだ。ポール・オースター『幽霊たち』では、探偵のブルーがホワイトに頼まれて、ブラックという男を監視し続ける。ブラ…

反応するところも感動もこんなに違っちゃう

いつ読んでも限りなく切なくなる物語がある。J.D.サリンジャー『ライ麦畑でつかまえて』もその一つだ。16歳のホールデン・コールフィールドと妹フィービーの会話のところで、いつもじーんとなってしまう。ホールデンが将来なりたいものについて語るシー…

作家・中島らもさんと

過去、数年間毎日夜になるとお酒を飲んでいたことがある。ひどく落ち込んでいて、つい頼ってしまっていた。お酒というのは毎日飲んでいると、もうあまり酔わないというか、酔っている感覚が鈍くなって、ウィスキーをストレートでぐいぐいいくようになる。あ…

たまにはこういうこともある。

詩人というと、通常と異なる人種のように思われるだろうか。私には、詩を書く友人が複数いる。詩のなかでは激しく逸脱するけれど、普段の会話はとりたてて変わったところはない。当たり前に挨拶するし、冗談も言い合う。ある程度の繊細さは持っているだろう…

翻訳って奥が深いんですね。

前に、村上春樹の翻訳は村上春樹臭が漂っていて……とか書いたのだけど、 【本の記録・感想】ふと再会してみたくなる - kai8787の日記それは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』の冒頭を読んだだけの印象だったので、トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』…

都市の迷路に立つ

ニューヨークには行ったことがない。随分前、ボストン、プリンストン、ミネアポリス、ロスには行ったことがある。アメリカの印象は一言で言うと “るつぼ” (人種のことだけじゃなく)だ。でも、私の見たアメリカはほんの一部のホワイトカラーの世界だし、二…

微妙な距離ー男女の友情そして恋

男と女の友情には、ほどよい距離感が必要だと思う。性的にドライなところがないと続かないのは当たり前として。相手の異性を感じない程度の距離感。二人でお酒を飲んだとしても、「じゃあな」と別れるくらいのさっぱりした関係。絲山秋子『沖で待つ』のなか…

辞書っておもろいんですね【恋愛】

辞書っていうと、やはり高校生の頃に一番よく使っていたかなぁ。私のはセキセインコにかじられてボロボロになっていた。友だちには調べた英単語にマーカーで印をつけてピンク色になってるコや、辞書を1枚1枚くしゃくしゃにすると引きやすくなると教えてく…

書くことで失われるもの

フランツ・カフカは迷う人である。本を出したいと思いながら、出版が決まりそうになるとやっぱり出したくないと思ったり、結婚を申し込んだ女性から承諾されると、自分がいかに結婚生活に向いていないかを延々と手紙に書くといったぐあいに。迷い続ける=決断…

ふんわり、何となく、わかる。

絲山秋子『ニート』読了。 小説家になった「私」が、昔つき合っていた「キミ」のブログを見て、「キミ」が相変わらずニートであって非常に困窮していることを知る。 「私」もニートだったけれど、「物書きになりたいという夢だけで、世間にずいぶん許しても…

シェアハウスってどんな感じ?

最近、シェアハウスに興味があって、検索して物件を見たりしている。東京でも3万円台で住めるものから、カフェみたいな共用スペースのあるソーシャルアパートメントまで色々ある。自分がシェアハウスで暮らせるかなと想像してみると、ちょっと楽しそうでちょ…

感情の穴に落ちたときには

私はどちらかというと悲観的な人間だ。ただ、割りと単純な性格なので日々のちょっとした幸せを感じて、将来の不安をまぎらわして生きている。楽観的とか悲観的な性格というのは、やはり生来のものなのだろうか。若くてエネルギーに満ちていても悲観的な人は…

さぁ、もう一度。 Re-born

自分ではどうしようもないことがある。どんなに思ってももはや叶わない。もう努力とかそういうのでなく、誰かに振り向いて欲しいのにそれは無理なのだとわかってしまったりとか。挫折とまでいかなくても、これまでとは違う新たな道へ一歩踏み出さないといけ…

暗闇を語ることー希望

小学生の頃の親友は、自然と人が集まってくる不思議な魅力のある子だった。彼女が何故私と仲良くなったのかはわからない。友人でありながら、私は彼女に憧れのようなものを抱いていた。私は不器用で人を寄せ付けないようなところがあって、柔らかく人を包み…

蒼い森のなかで憩う

ときどき、人混みの中でひどく孤独を感じていたたまれずにひとしきり部屋に籠ることがある。そういう時は自分とかけ離れた世界に飛び込みたくなって集中的に読書をする。二転三転する物語ではなくて、静物画のような物語を欲しているのだ。宮下奈都『羊と鋼…

物語ーイマジネーション

どんな職業でもそうだと思うが、30年以上も続けていれば一家言あるわけで、村上春樹さんも割りと赤裸々に小説家という仕事について語っている。村上春樹『職業としての小説家』 ≪内容≫ 小説家は寛容な人種なのか 小説家になった頃 文学賞について オリジナリ…

恋の話

今は激しい恋よりも静かな恋がしたいな。別に忍ぶ恋というわけじゃなくて、ぼっと燃え上がるのでなく、穏やかな光のような淡い恋。奪うんじゃなくて、そっと寄り添って歩き、何も話さなくてもずっと二人でいられるような恋。胸のなかにほんわか暖かいものが…

幸福って何?

『幸福な王子』は子どものころ絵本では読んだことがあったけれど、文字だけで読むのは初めてだ(『幸福の王子』という訳もありますね)。今回、読み返したのは、一つには作者のオスカー・ワイルドの厳しい生涯を知ってからだと、また別の感慨があるのかなぁ…

【本の記録・感想】欠落と再生

村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』読了。ごく親しい間柄だと思っていた相手からの突然の拒絶は、今までの自分が崩壊するんじゃないかというくらいショックな体験だろう。しかも、その理由が明らかにされないままであれば、ボディーブロ…

【本の記録・感想】居場所をつくる

今いる場所が終の住まいだと思っていますか。私はそう思うこともあれば、ときどき逃げ出したいという衝動に駆られることがあります。居場所を少し変えるだけでも、気分はほんのちょっぴり開けてきたりする。お気に入りの場所が身近にあるとしても、もう少し…

【本の記録・感想】ふと再会してみたくなる

久しぶりに村上春樹の小説を読もうかと思う。過去、集中的に何度も繰返し読んでいた時期があったけれど、ある時からパタッと読まなくなった。村上の翻訳書『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が原因だ。本屋で手に取って最初の1ページを読んだところで置いて…

【本の記録・感想】ゆるやかな仕事

私はいわゆる賃労働はしていない。体調が良かったり悪かったりするので、定期的に就業するのは難しい。ボランティアはやっているけど、「具合が悪くて休んでもバックアップするよ」と言ってくれる仲間がほとんどなので、お陰様で何とか続けられている。有難…

【本の記録・感想】記憶の遠景

誰にでも思い出したくない過去はある。それが吐き気やめまいを伴うようなトラウマだということもあるだろう。起こった事実は変えられないが、その解釈は時が経つにつれ変容していく。 トラウマ体験を昔の嫌なことの1つとして〈過去の引き出し〉にしまえるよ…